夕刊編集部記者ブログ
夕刊編集部さん

2015/04/22 14:09

下町の本屋さん さようなら

 この春、仙台市内からまた一つ本屋が姿を消した。

風情ある街並みが残る若林区穀町の表通りに面した「穀町書店」。

 この日で店を終えると聞き、3月31日の夕方に訪ねた。

 明くる日も普段通りに営むかのように、約70平方㍍の店内には

雑誌の最新号や話題の小説が隙間なく並んでいる。

 四倉栄子さん(88)が、夫の邦彦さん(89)とこの地で創業したのは

1954年の秋。長男の俊彦さん(59)が後に加わり、力を合わせて切り盛りしてきた。

 店の草創期、人々の暮らしは豊かでなかったが、皆が活字を欲していた。

米国の総合誌「リーダーズ・ダイジェスト」の日本語版や人気婦人雑誌の

 発売日になると行列ができた。

ほぼ同時に二つの出版社から児童向け世界文学全集が刊行された時は

邦彦さんと2人で読み合わせて内容を吟味した。

 「重視したのは子どもが理解できるかどうか。片方の本は訳が古めかしく

薦められませんでした」

 「主観を持って本屋をやったらつぶれますよ」という忠告ももらった。

それでも「本は商品ではない。心を伝えることが肝要」と信じて進んできた。

 年間の休みは元日の1日だけ。朝9時に店を開けると、めまぐるしく

夜遅くまで働いた。

 本の立ち読みをとがめたことは60年で一度もないそうだ。

栄子さんは「本が好きで読んでいるのでしょう。少年ジャンプでもいいんですよ」

とほほ笑む。

↑最後の日、愛着を込めた本に別れを告げる栄子さん 

 大型書店やコンビニの進出、インターネット販売の隆盛など、

小さな本屋をめぐる環境を取り巻く環境は年々厳しさを増したが

店の根強いファンに支えられ、何とか踏ん張ってきた。

 「もう潮時」と思い始めたきっかけは、東日本大震災で変化した、

ちまたの空気だったのかもしれない。

 「本に親しむ状況ではなくなったのでしょうか。売り上げが大きく減りました」

 近くにある仙台一高の生徒の足が遠のいたのも寂しかった。

「夕方になると店の前は自転車であふれたものですが…」

 閉店の数日前、栄子さん直筆のあいさつ文を店頭に掲げた。

長年の感謝をしたためた文章の一節に「残念無念のおもいです」とあった。

                                          (菊地弘志)